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「デキる上司は休暇が長い」
小松俊明 著 (あさ出版)

2008年05月03日

「採用」という難問をどう解くか

外資系企業にとって、「採用」はいわば入試問題で言うところの難問に相当するのではないでしょうか。どのような規模の会社であろうと、設立何年目であろうと、会社が儲かっていようといまいと、外資系企業が抱える「採用」の問題は、なかなか解決することが難しい、かなりの難問であるようです。受験で言えば、偏差値70以上の学生しか解けないような難問かもしれません。

これはリクルーティング会社で働くリクルーターの視点で見た実感です。 どの会社も優秀な社員のAttraction & Retentionに取り組んでいると思うのですが、現実は多少の差こそあれ、基本的には社員が定着しない会社が大多数であり、そうした社員のリプレースメントに私たちリクルーティング会社は大忙しです。人事部長という職種も、転職者の多い職種の一つですから、外資系企業の「採用」の問題は根が深いようです。 一方、「採用」の難問をリクルーティング会社が本当に解消できているのか、それについては大きな疑問を持たずにいられません。

私自身がリクルーターであるにもかかわらず、何を言っているのかと思う方もいるかもしれませんが、私は今のリクルーターのあり方は、まるで「流しのタクシー」のような存在になっている気がしてならず、それがゆえに人材紹介会社のあり方に大きな改善が求められていると思うのです。 「いい人がいたらご紹介します」、人事部長の皆さんはこうしたリクルーターの言葉を何度繰り返し聞いてこられたでしょうか。

これは人材紹介サービスに成功報酬というスタイルが定着しているが故ですが、これはリクルーターの立場からしてみれば、「ビジネスのネタになる求人情報を無償で提供いただきありがとうございます。ご紹介できる人材がいたら、そのときにお声がけしますが、いなければ特にただ働きはいたしませんのであしからず」というメッセージになるわけです。これでは、リクルーターが、人事部長の皆さんから当てにされないのも無理ありません。

一方、人事部長の皆さんとしては、採用を検討したいほどの優秀な候補者さえいればいいわけですから、求人情報というお触れ書を世に出して、そこに食いついてくるリクルーターが差し出す人材をそのつど、鑑定すればいいということになります。これが合理的なようで実は合理的な結果になっていないというのが、採用の現場の嘆きのような気がします。つまり、多くの採用企業も安定的に結果を出してくれるリクルーター不足に悩まれていらっしゃり、リクルーターの世界も過当競争、そして不安定なビジネスの状況に悩んでいるという結果になっています。

黙っていても優秀な応募者が多数集まるような優良企業であれば、ある程度お触れ書効果はあるのですが、多くの外資系企業の場合、一定のスキルと経験を持った人材となると、なかなか自分達の会社にタイミングよく応募してくれるというわけにはいかないようです。そうなると人材紹介会社のお出ましなのですが、これがいわゆる「流しのタクシー」状態というのが現状です。

「流しのタクシー」というのは、自由気ままなものです。ガソリンを無駄にしたくないとなれば、ホテルや盛り場の周辺を電車がなくなった深夜にうろうろしていれば、一番効率よく、いわばロング(長距離)のお客さんを拾えます。つまり、タクシーの運転手は自分の都合いいように仕事を選び、自分ができることだけで、できるだけ楽して目先の小銭を稼ごうとするわけです。 深夜の盛り場には電車がなくなってタクシーに乗るしかないお客さんばかりですから、必ずしもサービスの向上はいりませんし、まして料金は深夜料金です。乗客の多くは酔っ払ってまさに瀕死の状態。「流しのタクシー」は、必ずしもそんなに儲かりませんが、必要に迫られた時間帯と場所では、常に必要とされています。

人材紹介サービスは、まるで同じような状態になっていると感じています。取り組みやすい求人や採用企業にはリクルーターは群がります。いわばお客さんの取り合いになります。(深夜の盛り場も、流しのタクシーが争うようにお客さんを奪い合っています。)どうせ成功報酬だからということで、リクルーターは難しい採用案件には目もくれなくなります。給料が高い大物ばかりを狙うようにもなります。早く決められそうな求人ばかりを好むようになります。候補者に対するキャリアカウンセリングや、企業の経営陣に対するいわゆる採用コンサルティングの腕を磨くよりも、多少精度を欠いてもいかに早くたくさんのレジュメを出せるか、リクルーターはそこに終始するようになり、人事部長も、そんなリクルーターに慣らされていくという現実があります。

このように人材紹介会社と採用企業の関係は、「流しのタクシー」と「終電後の瀕死の客」の関係になっている場合が増えているようです。どちらにとっても、相手が必要だということですが、「採用」という難問を解くための根本的なソリューションには到底なっていないのではないでしょうか。 私はリクルーターですから、身内に厳しい目を向けがちになりますが、そもそも人材紹介会社のサービスの内容が単純すぎるところに問題があるように思えてなりません。

「30%で成功報酬、いい人がいたら紹介します」ではなくて、採用企業の根本的な問題、特にその中でも「採用コストの削減」や「採用業務の効率化」、そして「採用プロセスの改善」に、具体的な提言をしていけるようにならないことには、人事部長の皆さんと一緒になって「採用」という難問を解いていくことにはならないでしょう。 結局、採用企業がやむをえず人材会社を使っているという状態になっていると思うのです。つまり、できるだけ人材紹介会社を使いたくないという人事部長の本音があると思うのです。

一つ数十円という部品を売っている会社からしたら、一人採用を決めて数百万円のフィーを請求してくるリクルーティング会社の暴利ときたら許せない、という気持ちもあるかもしれません。確かに、各社とも明らかに採用コストは高すぎるのだと思います。ただし、だからといって今のままでは人材紹介会社のフィーが下がることは当面ないと私は見ています。現状を打開していくためには、採用企業は大きな改革に取り組んでいく必要があるのだと、私は思っています。

最後に、リクルーターとして、人材紹介会社がサービスレベルをもっと高度化していかないと、私たちリクルーターにも未来はないでしょう。そもそも過当競争ですし、タクシーの例で言えば酔っ払った瀕死の客にとって、「流しのタクシー」など、その場限りのサービスなのです。 タクシー業界でも、「流しのタクシー」な長続きしないといいます。この議論の続きは、「採用」の大改革に取り組む人事部長の皆さんとまたしたいと思います。 今回は久しぶりに、ちょっとまじめな話を書いてみました。

コメント

「流しのタクシー」と「終電後の瀕死の客」の関係とは的確な面白い表現ですね。私もリクルーターの端くれとしてこの状況に乗っかりながらも危機感を感じています。流しでもやっていけるけど、それだけだと行き詰まる気がしています。どこかで読みましたが、タクシー運転手の中にはご指名される車もあるようで、その車は社内に懐かしいJAZZをかけていて、定期利用のお客さんはわざわざ送迎を依頼するそうです。リクルーターの端くれとして、ちょっと違ったサービスを提供して、「定期利用のお得意さん」(終電後の瀕死の客ではなく)にはご指名される立場になりたいですね。そして自分自身が気持ちの良いタクシーになって長期的にこの仕事を楽しんでいきたいですね。

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